気紛れDIARY
: 安倍 寧 Official Web Site

 平成20年9月1日現在、日本の総人口は1億2,768万人、その内いわゆる後期高齢者(75歳以上)は、1,319万人を数える。全人口のおよそ10%が、すこぶる評判の悪いこの呼称の年齢に属することになる(総務省統計局推計)。
 小子化に歯止めがかからない以上、日本は、今後ますます高齢者社会への道を突っ走らざるを得ないだろう。

若者より元気な?お年寄りたち若者より元気な?お年寄りたち このような状況下、高齢者は若い世代に迷惑をかけず、どう生きていけばよいのか。若者や働き盛りの世代は老人層とどう共存していけばいいのか。
 ロックンロールに全身全霊でぶつかっていくアメリカの老人たちを徹底取材したドキュメンタリー映画「ヤング@ハート」は、今の日本、これからの日本を考えていく上で実に多くの示唆に富んでいる作品である。
 社会保険問題でもたつく舛添厚労相なんぞは、この映画の元気のいい老人たちにどやしつけられるといい。

 話はまったく違うが、昔、「ヤング・アット・ハート」というアメリカ映画があった。良家の姉妹と音楽家たちの恋のもつれを描いた1954年の作品で、主演は、油の乗っていたフランク・シナトラ、ドリス・デイなど。ジョージ・ガーシュウィン、ハロルド・アーレンらのスタンダード・ナンバーが次々と流れ、随所によき時代のアメリカをほうふつとさせる場面がちりばめられていた。
 シナトラが歌う同名の曲がヒットしたほうが先だから(53年、「ビルボード」ヒットチャート第2位)、多分、曲に触発されて映画が企画されたのだろう。
 この映画と「ヤング@ハート」は、内容的にもちろんまったく無関係だが、ふと往年の音楽映画に思いを馳せたりしたのは私の年齢のせいかもしれない。

 なお、以下に併載するのは雑誌「フィガロ ジャポン」9月20日号に執筆した「ヤング@ハート」の短評です。こういう執筆依頼がくるのは、音楽映画ということもあるでしょうが、私が後期高齢者の仲間入りしたからでしょうか。

<ロックは世代を超えたビタミン剤、若々しい高齢者たちを見よ!>

 ロック音楽ってなに?それに対する実にストレートな解答をこの映画は用意してくれている。それは、ロックはね、ひとことでいえば生命の糧なんですよ、という強烈なメッセージである。

 若者や場合によっては大のおとなにだってロックは元気の素だが、日本でいうところの後期高齢者にとってもこんなに有効なビタミン剤だったとは?

 映画「ヤング@ハート」は、同名のロック・グループを題材にしたドキュメンタリー・フィルムである。このアメリカ・マサチューセッツ州に実在する男女混成(混声)チームは、総勢24名、平均年齢80歳だという。全員、間違いなく年金生活者にちがいない。

 息子のような54歳の指揮者ボブ・シルマンのもと、おじいちゃん、おばあちゃんたちは、戸惑い、つまずきながらもロックのリズム感をわがものとしていく。

 大声で叫び全身をくねらせつつ、ロック・スピリットを体得していく姿は、時には滑稽だが、私たちの胸を揺さぶらずにおかない。お色気で迫る91歳のおばあちゃんもいる。

 彼等が全身全霊をもって歌い上げるのは、Sonic Youth 、The Crash ほかロックの名曲の数々である。71回、Can can という文句が出てくるAllen Toussaint の「Yes We Can Can」に挑戦する場面は、文字通り「なせばなる」とはこういうことなのかなと納得してしまった。

 日本のロック界では歌うほうも聞くほうも案外ないがしろにしているけれど、ロックの神髄は歌詞にある。激しいビートにうち消されがちだが、ロックの歌詞はニュアンスに富み、深く重い。志半ばで世を去った仲間に捧げるべく歌われるBob Dylan の「Forever Young 」には、年齢故の格別の思いが行間に滲み出ていたかに思えた。

 日本のシニア劇団さいたまゴールド・シアターも演出家蜷川幸雄の特訓のお蔭で成果を上げているようだから、ひとつヤング@ハート並みにロンドン公演を目指してはいかがでしょうか?

 

11:27 | コメント (1)

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