気紛れDIARY
: 安倍 寧 Official Web Site

『シカゴ』日本版の再演が始まりました(7月4日まで、赤坂ACTシアター)。
 歯切れのいい音楽(ジョン・カンダー)、簡素で独創的なダンス(オリジナル振付:ボブ・フォッシー)、気の効いた演出(ウォルター・ボビー)と聞きどころ見どころ満載の舞台です。
 なぜこのミュージカルがこんなに人気があるのか。それは誰もが“悪徳の栄光”という主題に共感を覚えるからです。どこの国でも悪いことをしていい目を見るのは政治家、金持ちなど国の上層部ばかり。たまには庶民だって恩恵にあずかりたい。その夢を一瞬ながらかなえさせてくれるのが『シカゴ』の女囚たちではないでしょうか。

(左)ロキシー・ハート役の米倉涼子、
(中央)弁護士ビリー・フリン役の河村隆一、
(右)ヴェルマ・ケリー役のアムラ=フェイ・ライト
ブロードウェイ・キャストが挑む日本語の科白やいかに

『シカゴ』には私たち観客をぞくぞくっとさせる個所が、ここかしこにいっぱい詰まっている。その迫り方もセクシーなダンスあり、小粋な歌あり、笑いを誘発する科白あり、まあその多彩なことといったら……。
 私が好きなのは、まずは冒頭、ひとりの出演者が、スポーツ大会の選手宣誓のように声高らかに呼ぶあの科白だろうか。
「紳士淑女方、これからお目に掛けまするのは、殺人、欲望、腐敗、暴力、搾取、姦通、裏切りの物語。お心当たりのものばかり取りそろえました」
 これから〝悪徳オリンピック〟の始まり始まり……。
 1996年からブロードウェイでロングランされているこの『シカゴ』(ウォルター・ボビー演出、アン・ラインキング振付)は、なんどもツアー・カンパニーが来日しているし、日本人キャストによる舞台も上演されている。今回の公演も基本は日本人出演者による日本語版だが、目玉は、主要登場人物のひとりヴェルマを、ブロードウェイ・キャストのアムラ=フェイ・ライトが演じることだ。単身、日本人出演者のなかに飛び込むのだから、英語の科白というわけにはいかない。日本語の猛特訓を受けての来日である。
 私が知る限り、ブロードウェイ俳優がブロードウェイ発の日本プロダクションに参加したケースは、たった一回だけある。『ビッグ・リヴァー』でロン・リチャードソンと真田広之ががっぷり四つに組んだ舞台である。黒人奴隷役のリチャードソンは歌はさすがだったが、日本語の科白がいかにもたどたどしかった。今回も歌、ダンスはもうばっちりだろうから、科白の出来いかんがやはり気にかかる。

ロキシー・ハート役の米倉涼子ダンス・ナンバーで描く悪徳の数々

『シカゴ』は、このミュージカルを素材に作られた映画(監督ロブ・マーシャル)が日本でも超ヒットしているから、ここでこまごまと説明するまでもなかろう。時は1920年代、ところはシカゴ刑務所内部。ロキシー・ハート(米倉涼子)、ヴェルマ・ケリーとも色恋がらみで殺人を犯し、今は囚われの身となっている。しかし、地獄の沙汰も金次第、看守の女ボス(田中利花)、悪徳弁護士フリン(河村隆一)に賄賂を使えば無罪釈放も夢ではない。彼女たちは、無罪を勝ちとって自由の身となり、ショウの舞台で活躍することを夢見ている。
 映画公開時、アメリカではたまたまO・J・シンプソン裁判と重なり、なにかと話題を呼んだ。
 前回(2008年)の舞台で好演した米倉、河村は、いっそう役柄と一体化した円熟の演技を見せてくれるにちがいない。
(中央)弁護士ビリー・フリン役の河村隆一 しかしなんといっても、『シカゴ』最大の見どころは、今は亡きボブ・フォッシーが振り付けたダンス・ナンバーの数々である。歯切れのいいジャズのリズムに乗って繰り広げられるセクシーなポーズや動きの数々。男女ダンサーのからみ合いには思わずどきりとなる。手のひらひらさせ方、胸やお尻の突き出し方など独特のフォッシー・スタイルに注目を。
 いい替えるといちばん最初に紹介した悪徳宣言の一語々々がダンスという身体的表現に見事に置き換えられている、ということなんですな。(コミュニティ・マガジン『コモ・レ・バ』2010年6/7月号所載)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

★『CHICAGO
東京・赤坂ACTシアターにて6月9日~7月4日
脚本・オリジナル版の演出・振付:ボブ・フォッシー/演出:ウォルター・ボビー/作曲(ジョン)、脚本・作詞(フレッド):ジョン・カンダー&フレッド・エッブ/振付:アン・ラインキング/出演:米倉涼子(写真左)、アムラ=フェイ・ライト(右)、河村隆一(中)
料金:S席12,000円、A席10,500円、コクーンシート5,000円
〔住〕港区赤坂5-3-2赤坂サカス内
〔問〕03-3498-6666(キョードー東京)

 

13:00 | コメント (0)

« 2010年05月 | メイン | 2010年07月 »