気紛れDIARY
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この舞台『姉妹たちの庭で~モーニング・アット・セブン~』はすでに閉幕していますが、話題の公演だったのでUPしました。

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時代を超えて感動のたねを植えつけるサムシングが宿る
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 ロンドンのウエストエンドやニューヨークのブロードウェイの劇場で、時折、こんな客席の光景を見掛けることがある。出しものはかならずといっていいほど、きわめて上質なストレート・プレイである。男女の機微をきめこまやかに描いた人生劇の場合が結構多い。
 ドラマが進行している最中は観客たちは、ちょっとしたユーモラスな仕草やぴりっとわさびの利いた皮肉な科白に敏感に反応し、笑い声を絶やさないのだけれど、幕が下りた瞬間からちょっと雰囲気が違ってくる。スタンディング・オベーションをするのを忘れたかのように深く溜め息をつき、今、終わったばかりのドラマの奥行きの深さを反すうしているかのようだ。
 舞台と客席が完全に一体化した光景とでもいったらいいだろうか。
 シアタークリエ6、7月公演『姉妹たちの庭で~モーニング・アット・セブン』でもまったく同じような客席の光景が見られるにちがいない。私は、1980年、ブロードウェイで再演されたとき、たまたまこの芝居を見ているのだが、目撃した客席のありさまは、劇の進行中も閉幕後もまさにそのようなものだった。
アメリカでの初演は1937年、80年に次いで2002年にもリヴァイヴァルされている。時代を超えて人々の心に感動のたねを植えつけるサムシングが、この芝居には宿っているのだろう。
 アメリカ中西部のどこにもあるような小さな町の、これまた際立ったところのあるわけではない四人姉妹の物語である。姉妹の物語というとチェーホフの傑作『三人姉妹』を思い浮かべる人が多いと思うが、ふたつの作品には生きることの意味を探究しているという点で共通する要素がある。ただ『姉妹たちの庭で』の登場人物たちは、姉妹たちだけでなく、その連れ合いも許婚もみんな私たちの回りにいそうな人たちばかりなので、その揺れ動く感情や心理により共感できるかも知れない。

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四人のゴージャスな女優たちによる〝スター・ウォーズ〟
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 もっとも平凡な人たちだからといって、平凡な幸福に浸っているだけで、人生の苦しみ、悩みと無縁というわけではない。劇の進行とともに、登場人物たち誰もが観客の想像し得ないしがらみにがんじがらめになっている事実が、明らかになっていく。きっかけは、三女の婚期遅れの息子が7年越しのフィアンセをようやく親族一同に紹介しようと思い立ったことだった。
 このお芝居の最大の見どころは四人姉妹を演じるゴージャスな顔ぶれだろう。いちばん上から順に佐久間良子、浅丘ルリ子、江波杏子、安奈淳である。佐久間、浅丘、江波は、かつてそれぞれ東映、日活、大映を背負って立った映画女優である。そう、大女優と呼んでもおかしくない。映画界出身でない唯ひとりの安奈はもと宝塚歌劇団トップ・スターだから、キャリアに遜色はない。
 私は、以前、アカデミー賞のテレビ中継で、開幕前、司会の喜劇俳優が叫んだひとことをふと思い出した。
「すでに楽屋で〝スター・ウォーズ〟が始まっています」
 稽古場から本番を通じて繰り広げられる、四人のヴェテラン女優による絢爛たるスター・ウォーズが見ものですぞ。
(コミュニティ・マガジン『コモ・レ・バ』2011年夏号より転載)

 

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