気紛れDIARY
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大竹しのぶが伝説のシャンソン歌手エディット・ピアフを演じたらというのは、そもそも私のアイディアです。
それだけに、今回の舞台とても楽しみです。

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シャンソンの歴史上もっとも有名な歌手
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 日本では、年配者はともかく、若い人たちは、エディット・ピアフの名前を聞いてすぐにぴーんと来るのかどうか、はなはだ心もとない。もし知っているとしたら、辛うじて2007年秋に公開された映画『エディット・ピアフ~愛の讃歌』を通じてではなかろうか。
 マリオン・コティヤールが演じた、ああ、あの歌手のことねと、ようやくわかってくれたりして……。なんと情けないことか。世界的に、フランスの流行歌シャンソンそのものの地盤沈下著しいのだから、まあ仕方ないことなのだけれど。
 とはいえピアフが、シャンソンの歴史上もっとも知られている歌手という事実は、揺るぐはずもない。
「愛の讃歌」「バラ色の人生」「水に流して」など、彼女が歌い、国境を超え大ヒットとなったシャンソン数知れず。
 エディット・ピアフの人生は、初めから波瀾万丈だった。産気づいた母親が、病院にたどりつく前、路上で彼女を生み落したという。真偽はわからないが、ピアフ自身が路上説をいいふらしていた。今、日本でいちばんシャンソンにくわしい音楽評論家の蒲田耕二さんが、著書『聴かせてよ愛の歌を』のなかでそう書いている。
 ピアフの生涯は、今まで世界各国でいろいろなかたちで映画化、舞台化されてきた。1915年生まれ、1963年没。その一生はあまりにも短かった。しかし、さまざまなドラマチックな出来事で彩られている。

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心ときめく大竹しのぶのピアフ
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生後2ヶ月で母に捨てられ、3歳で失明するが、幸い3年後に視力が戻った。幼いときから大道芸人の父とともに路上に立つ。見物人に金を乞うのが彼女の役目だった。パリの裏町で春をひさいだこともある。
 もっとも悲劇的な事件は、最愛の恋人マルセル・セルダン(ボクシング・ミドル級世界チャンピオン)を飛行機事故で失ったことだろう。この大いなる哀しみのなかから生まれたのが「愛の讃歌」という一世一代の絶唱である。すなわち、この歌は、題名とは裏腹にレクイエムなのだ。
 英国の女流作家パム・ジェムス作『Piafピアフ』は、この偉大な歌手を主役に据えた劇としてはもっともウェルメイドな戯曲である。歌に生き恋に生きた彼女の一生を見事に描き切っている。劇のなかへのシャンソンのとり入れ方も実に巧みというほかない。
 そして何より、今回の公演で私がもっとも心ときめくのは、ピアフその人を演じる大竹しのぶである。日本ではこれまで越路吹雪、上月晃、栗原小巻、安奈淳、安蘭けいらがさまざまな台本・演出でピアフに挑戦して来たが、どこかきれいごとに演じられてきたきらいがある。
 世界的スターの地位を得たとはいえ、ピアフの人生は美化され過ぎては真実味を失うことになってしまう。そこはリアルな演技では定評のある大竹のことだ。恥も外聞もなく女であることに徹したピアフの生涯を、見事再現してくれるにちがいない。
 そしてシャンソン。人生の歌シャンソンに人生の達人大竹がどう味つけするか。想像しただけでぞくぞくしてきませんか。

(コミュニティ・マガジン『コモ・レ・バ』2011年秋号より転載)

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ピアフ
東京・日比谷シアタークリエにて10月13日~11月6日
作:パム・ジェムス/翻訳:常田景子/演出:栗山民也/音楽監督:甲斐正人/美術:松井るみ
/出演:大竹しのぶ、田代万里生、碓井将大、KENTARO、山口馬木也、梅沢昌代、彩輝なお、高橋和也、山路和弘、辻萬長
料金:9,500円
〔住〕千代田区有楽町1-2-1
〔問〕03-3201-7777(東宝テレザーブ、9:30~17:30)

 

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